やらない夫はアンダルシアに夢を見ます 第六話

大急ぎで部屋に戻る

安っぽい絵を飾った額縁を拳で払い退け、隠し金庫からコルトを取り出す

死に損ないのガキだった俺にボスが与えてくれたコルトだ

コイツを頼りに今日まで生きてきた

コイツと裏通りを走ってきた

どんな罠があろうとも、ダディの頭に弾丸をブチ込んでやる

待っていろ、やる夫

不甲斐ない兄貴で申し訳ない

俺がカタをつけて、お前を一端にしてやる

タクシーに多めのチップを払い信号無視をさせて港へ急ぐ

指定された場所に着くが、人気が無い

ダディはどこ隠れていやがる…

雨と波の音の中、神経は研ぎ澄まされていく

不意に俺を呼ぶ声がする

聞き慣れた声だ

やる夫が俺に向かって走ってきた

無事だったのか?

ダディはどうした?

やる夫が俺の背後を指さす

急なことに気を取られて警戒が疎かになった

コルトを引き抜きながら振り返る

ダディの頭に鉛玉をブチ込んでやる

どこだ?どこにいる?ダディ!

俺の体の芯に衝撃が走った

わき腹が冷たくなり、次の瞬間に灼熱する

ゴリ、ゴリ、ゴリッ…と、内臓が搔き回され、引き千切られた音が響く

全身の力が抜けて、雨に濡れたコンクリートに頭から倒れた

混乱する頭で理解したことは、俺は助からないということだ

ああ、なるほど、そういうことか




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