やらない夫はアンダルシアに夢を見ます 第五話

受話器の向こう側でボスが低い声で言う

やる夫がダディの襲撃でミスって人質になった

タクシーに乗り、ボスがいるアジトに向かう

これは俺の落ち度だ

後継者を作ろうと焦った結果が、このザマだ

俺が付いて行ってやれば、せめて護衛を何人か付けてやれば…

こうなった以上、やる夫に手柄を立てさせるどころか、救い出すことも不可能だ

カルメンとアンダルシアへ行く夢も潰える

考えろ、考えろ、考えろ…

ボスにとって俺は価値ある男だ

しかし、トカゲのボスにとって俺はどうだろうか?

俺が死ねばボスの威厳は落ちる

それはトカゲのボスのとってはチャンスのはず

案の定、俺のボスは大反対した。

勝負はここだ、乗ってこいトカゲのボス!




よし、トカゲのボスは乗ってきた

自分のシマで他のボスの兵隊が派手に大勢動けばメンツの問題になるって建前だ

ハリボテの協力体制は崩れた

トカゲのボスの理想は、俺がダディの罠にハマって死ぬことだ

そして自分の兵隊を使ってダディを始末すれば “ファーザー” の覚えもめでたく “ファミリー” での立場も上がる

やる夫がしくじったことで、トカゲのボスは千載一遇のチャンスを得たと思っている

ここでもう一芝居だ

トカゲのボスは有頂天だ

条件を飲んでくれる可能性はあるだろう

よし、俺が死ぬと決めつけてるトカゲのボスは条件を飲んだ

ダディを始末して、やる夫を連れ戻す

そして、「ダディを始末したのはやる夫」と言えばいい

それが『真実』になるのだから

ニヤけるトカゲのボスを見て、心の中で微笑む

お前の思い通りには行かない

俺にはボスから受け継いだコルトがある

カルメン、約束の時間には少し遅れそうだが待っていろ




ランキング参加中↓
にほんブログ村 その他日記ブログ フリーター日記へ
にほんブログ村

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加