やらない夫はアンダルシアに夢を見ます 第一話

今日も雨が降っている

ここは殺人、薬物、人身売買が蔓延る街

無法こそが法だ

世間知らず坊ちゃんや、怖いもの知らずのガキは3日と生きていられないだろう

俺は “運良く” この街で10年ほど生きている

何故なら俺は街を牛耳る “ファミリー” の一員になったからだ

インチキしかない街でも、本物のバーボンとフラメンコを楽しめる酒場がある

ダンサー “カルメン” は俺の女だ

やる夫は俺の弟分で、面倒を見るようになって3年が経った

呆れるくらいの能天気だが、銃の腕前はそこそこだ

今まで弟分は何人もいたが、全員1カ月も経たずにバックレた

それを考えりゃ、コイツは俺の後継者になれるかも知れない

いや、後継者になってもらわないと困る…




今は仕事の合間の休息だ

2杯目のバーボンを注文したとき、若い男が店に飛び込んできた

何度か見たことがある “ファミリー” の下っ端の若造だ

俺がこの街で覚えたことがある

それは愉快な時間は常に不愉快で終わるってことだ

ここで嫌な顔をする奴は、この街じゃ生きていけない

“ボス” の命令は絶対だ

店先まで見送ってくれたカルメンが呟く

アンダルシアの事を…

俺にしか聞こえないほどの小声だったが、それが命取りになる

この街じゃ一分の気の緩みさえ許されない

密告屋は路傍の石ほど多いのだから




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