不思議な体験4 死期を知った祖父

俺が中学生の時に父方の祖父が亡くなった。
陽気で優しいおじいちゃんだった。

祖父は自分の長男家族と同居していた。
ある夏の日、祖父の長男家族が用事で数日出かけることになったため、俺の父上が祖父の家(父上からすれば実家)に泊まることになった。
祖父はボケてはいなかったので1人で留守番しても良かったらしいが、心臓の病気をしたので万が一に備えて父上が一緒にいた。

*ここからは父上の話しを元に書きます。

夜のニュースで戦後50週年?の番組をやっていた。
そこで東条英機の顔写真がテレビに写った。



祖父は軍隊にいたが、ずっと国内で事務仕事をしていたらしい。
(祖父は軍隊時代の話しをすることを極端に嫌った)
特別に高い階級ではないので、東条英機と会話したことすら無いと思う。

たまたまテレビに写った東条英機を見て、やたら饒舌になった。
自室から古いアルバムを引っ張り出してきて、父上に色々と説明を始めた。

父上は呆気に取られていた。
軍隊時代の話しは一切しなかった祖父がアルバムを見せて、感情豊かに話し掛けてくる。
父上は祖父がボケたのかと心配した。

この時の事を父上ははっきりと覚えていて、通夜でこう言った。

「親父は急に我に返って、寂しそうに『懐かしい奴らがたまに来るんだ』って言ったんだ」

この一週間後に祖父は熱を出し、入院した。
医者からは体力的には大丈夫と言われたが、祖父は弱気だった。
何度も『延命はするな』と家族に言っていた。

熱は下がらず、肺炎を併発し約2ヶ月後に帰らぬ人となった。
家族に看取られ、笑うような死に顔だったと父上は言っていた。



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