大急ぎで部屋に戻る
安っぽい絵を飾った額縁を拳で払い退け、隠し金庫からコルトを取り出す
死に損ないのガキだった俺にボスが与えてくれたコルトだ
コイツを頼りに今日まで生きてきた
コイツと裏通りを走ってきた
どんな罠があろうとも、ダディの頭に弾丸をブチ込んでやる
待っていろ、やる夫
不甲斐ない兄貴で申し訳ない
俺がカタをつけて、お前を一端にしてやる
タクシーに多めのチップを払い信号無視をさせて港へ急ぐ
指定された場所に着くが、人気が無い
ダディはどこ隠れていやがる…
雨と波の音の中、神経は研ぎ澄まされていく
不意に俺を呼ぶ声がする
聞き慣れた声だ
やる夫が俺に向かって走ってきた
無事だったのか?
ダディはどうした?
やる夫が俺の背後を指さす
急なことに気を取られて警戒が疎かになった
コルトを引き抜きながら振り返る
ダディの頭に鉛玉をブチ込んでやる
どこだ?どこにいる?ダディ!
俺の体の芯に衝撃が走った
わき腹が冷たくなり、次の瞬間に灼熱する
ゴリ、ゴリ、ゴリッ…と、内臓が搔き回され、引き千切られた音が響く
全身の力が抜けて、雨に濡れたコンクリートに頭から倒れた
混乱する頭で理解したことは、俺は助からないということだ
ああ、なるほど、そういうことか
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